プライム・ストラテジーPython人材育成事例~Web高速化のリーディングカンパニーがPythonを社内公用語化、ハイパーオートメーションの実現へ~

<企業情報>
プライム・ストラテジー株式会社
https://www.prime-strategy.co.jp/
本社所在地:東京都千代田区大手町

<インタビュー>
代表取締役 中村 けん牛 様
取締役   西牧 八千代 様
業務部 業務課 課長 村上 千以 様
取材日:2020年4月3日

■Web高速化のリーディングカンパニー

プライム・ストラテジー株式会社は、世界シェアNo.1のCMSであるWordPressを高速化させる独自開発プロダクト「KUSANAGI」でよく知られた企業だ。KUSANAGIは、運用していくうちに重くなりがちなWordPressサイトを、管理画面を含めて高速化させる。そして、現在はWEXALⓇシリーズによりWordPressのみならず、あらゆるWebサイトを高速化することができるサービスを提供し、Web高速化のリーディングカンパニーの地位を築き上げた会社だ。KUSANAGIやWEXALⓇの導入によってサイトのパフォーマンスが大幅に改善し、その結果、売上やCVが向上したという効果を得た企業もあり、多くのユーザーから支持を集めている。同社はこのKUSANAGIとWEXALⓇをベースに、サーバの構築・保守を含めたWordPressサイトの開発・運用・保守を長年にわたって数多く手掛けてきた。そうして得た豊富な経験とノウハウをもとに、『詳解 WordPress』や『WordPressによるWebアプリケーション開発』(発刊:オライリー社)といった書籍を執筆している。これらの書籍はWordPressの開発に携わる者にとってのバイブルと言われ、数多くの読者を獲得している。
こうした実績を持つ同社へ信頼を寄せる企業は多く、顧客は官公庁をはじめ、教育機関、金融、国内外の大手有名企業と、幅広く顧客を獲得している。

■PythonによるAIを搭載したプロダクトをすでに提供

すでに高い評価を得ているKUSANAGIだが、2019年秋ごろに機械学習やAIを取り入れ、より効率的に稼働できる構成になったと言う。代表取締役 中村けん牛氏はこのAI開発について次のように語っている。
「昨年当社はAIの開発を積極的に行い、秋にはKUSANAGI上で動く『戦略AI「David」』を搭載しましたDavidは、Node.jsやLua、JavaScriptなどの様々な言語でできていますが、リクエストを違うモジュールに出してその結果をクラスタする機械学習にPythonを利用しています。この周辺で使われているインターフェースもPythonで記述されています。これが、当社がプロダクトにPythonを搭載した初めての例となります。
当初、このクラスタを簡単に処理させるプログラムにはNode.jsを使う予定でいましたが、適したライブラリがなく、あっても情報が少ないといった状況でした。その状況でPythonを見れば、簡単にできそうなライブラリがたくさん転がっていて、つい誘惑に負けてPythonを採用したのがきっかけです。この開発の際は最終的に、特徴量をNode.jsやJavaScript、Davidで作り、クラスタ処理はPythonライブラリであるscikit-learnの中からDBSCANモジュールを採用し、処理するためのインターフェースをPythonで作りました。これによってDavidは対象の最適化をどう行えば効率的になるか戦略を立て、実行できるようになりました。例えばクロールした大量のページの中から、同質性が高い者同士をクラスタ化し、代表格となるページを決めます。その結果、すべてのページを毎回クロールする必要がなくなり、KUSANAGIを効率的に稼働させられるようになりました。」

■AIカンパニーとしてPythonを社内公用語に、事務職も習得を目指す

このように、自社の主要プロダクトに、Pythonを用いて開発されたAI・自動学習機能を積極的に取り入れた同社だが、どのようにPythonエンジニアを育成しているのだろうか。
中村氏は社員のPython習得についての考えを明かしてくれた。
「現在、当社は“KUSANAGI Stack” (高速・セキュアにWebシステムを動作させる、AIとEngine、OSからなるプロダクト群)を事業の中核として位置付けています。KUSANAGI Stackをもって当社は各分野におけるハイパーオートメーションの実現を目指しています。これは当社が全社AI カンパニー化を推し進めることを意味し、今後、Pythonを最低限身に着けてもらうべき社内公用語とし、できて当たり前という前提で進めていきます。
そのため、今後は事務職を含めた全社員がテクノロジーのリテラシーを持つことを要求していきます。
なぜこうしたかと言えば、Pythonが今後、Excelや言葉のように、使わない仕事はないというような存在として扱われることを想定しているからです。あらゆる側面で、今の時流や今後の当社のベクトルに合致しているPythonは全員が学んで損になることはありません。どの分野のどの職種の人でさえ、Pythonができるようになったことで文句がでることはありえないと考えています。」

■自ら学び、自ら身に着けられることが重要

現在の同社の受験状況について、業務部 業務課 課長 村上 千以氏はこう教えてくれた。

「現在、試験合格者は11名です。これは当社で受験合格を目指して取組み出して2週間程の結果です。最終的には、事務職を含めた役職員全員が取得を目指します。社員間で情報共有が行われることはありますが、基本的に個人で頑張って頂きます。」
続けて中村氏は、認定試験への考えと採用についてこう教えてくれた。
「Python試験は我々にとってはひとつの象徴です。試験の合格に向けて情報共有や補助、学ぶ機会を与えることはありますが、特別なことはしません。また、認定試験に期日までに全員合格してもらいます。
新たに採用する場合の基準は、技術力があることが前提です。認定試験に合格していることを前提とはしませんが、入社後14日以内に早々に取得してもらいます。
この試験のレベルを数日で自ら学び、身に着けられる人だけと一緒にやっていけるのであればエコシステムを作っていけると考えています。」

■エンジニアに支援と機会を与え、一緒に世界を良くして行きたい

同社では、たとえ新卒であっても、技術力があれば上級エンジニア職に就くこともあると聞く。エンジニアへの思いについて中村氏に聞いてみたところ、こう答えてくれた。
「若くして技術力がある人の場合、この人たちに必要なのは教育ではなく、支援や機会です。こういう人たちがより能力が発揮できるようなチームを作っていくのが重要と考えています。
また、 “できる人”には、謙虚な人が多く、人に教えることやできない人に合わせることに違和感を持ちながら、悩んでいることが多いと感じることがあります。こういう人たちが集まって一緒に仕事をして世界をよくしていきましょうという考えでいます。
KUSANAGIはオープンソースのため、外にいても情報を得ることが可能です。このプロダクトの開発に貢献したいという人と一緒にやっていきたいですね。」

続いて、取締役 西牧 八千代氏は、昨今の情勢によって変化した求められるスキルについて話してくれた。
「今回の新型コロナウイルスで、いきなりテレワークに切り替わりました。これまで会話やビジネスマナーを含めた評価がされてきましたが、今はインターネット越しに成果を出せるかというのが加速していると感じています。」

■Web開発企業が本気で目指すPython道

Pythonに対する期待感や今後の計画について、中村氏は次のように答えている。
「当社はWebシステムの会社なので、Webシステム系の言語が発達する傾向にあります。KUSANAGIにはPHPがよく使われていますし、バックエンドはNode.jsやLuaが使われています。例えばNode.jsはchromeを簡単に制御できたりなどのメリットがあります。
Pythonについては、サーバを使うためのCLIがPythonの用途としてよく挙げられますが、我々はこれまでPythonをそうした用途では利用してきませんでした。
ですが、昨今、AIや自動化の比重は高くなりつつあり、また、機械学習の話になればPythonを使わざるを得ないと考えています。そうなると必然的に、当社のプロダクトもPythonに合流するという形になります。
実際、次のKUSANAGI 9ではAPIはすべてPythonでの実装となりますし、AIの部分でPythonを使っていく予定です。
これまでは、すべてNode.jsで作っていましたが、一部分をアロナクス教授というモジュールに委託する形にし、出力結果を出す部分はPythonでモジュールを作りました。この部分はNode.jsで書こうと思ったらライブラリ部分を含めたら数千行以上と想像がつかない行数になるところですが、Pythonで書いた結果、50行で済ませることができます。
Pythonは今後、当社がAIカンパニーであることを象徴するシンボルになると思っています。Web系の企業なのに、全員がPythonを習得しているということは驚かれると思いますが、当社は本気でPythonをやっていくのだと内外に示していきます。」

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